不整脈(心房細動など)


胸がどきどきするのに検査をしても正常としか言われない


不整脈には日常ほとんど無視できるものから、ほっておくと非常に危険なものまで、いろいろな種類のものがあります。

その中の1つに、「発作性___」と言うような、普段はまったく正常の心電図をしているに、症状を認めるその瞬間だけ心電図に異常を認めるといった、発作的に生じる不整脈があります。

 

「発作性心房細動」など


「発作性上室性頻拍」とか「発作性心房細動」などがそれにあたります。


これらの不整脈の場合、発作が生じていないときは全く普通の人と変わりありませんから、この時にいくら心電図をとっても正常という答えしか返ってきません。
よく胸がどきどきするから病院に行って心電図をとってもらったけど、どこも悪くないと言われて帰ってきた。と言う方を見かけます。
もし仮にその方が本当に不整脈の病気をわずらっていたのに、どこも悪くないと言われてしまうと、納得がいかないのではないでしょうか。実際にはあんなにどきどきを感じていたのに、正常なはずがない、きっとそう思う事でしょう。

病院で行う心電図検査はたかだか十数秒、たとえ長めにとったとしても、30秒から1分程度と言ったところでしょうか。
発作性というぐらいだから、例えば1日のうちに何回か発作を生じて、その瞬間は異常な心電図を示しているのかもしれません。しかし、その発作をたまたま病院にやってきたときの、わずか数十秒から1分程度の瞬間にとらえようというのは、よっぽどの偶然でも重ならない限り、ほとんど不可能ではないかと思われます。



24時間ホルター心電図


では、どうしたらその発作を心電図でとらえることができるのか?
それに対する答えは、ずばり、症状のあるときに心電図をつけて測定するしかありません。
ですが、発作性不整脈の方で、発作が始まって、それから病院に来て心電図を付けていたのでは、恐らく病院に着いた頃にはもう不整脈は治まっていて、また正常の心電図が記録されるだけになるかもしれません。仮にもう少し長く続いていたとしても、よっぽど緊急的な症状でもない限り、どきどきを感じた程度では、今目の前にある仕事を放り出して、今からすぐに病院にいきますなんて言える人はそんなに多くはないのではないでしょうか。


じゃあどうしたらいいのか?
発作が生じたその瞬間に心電図を付けなくてはいけないのは間違いありません。
それでは逆の発想で、心電図の方を発作に備えて自宅に持ち帰ればよいという事になります。要するに発作が生じたときに病院に行くのではなく、発作に備えて手元に心電図を置いておくというという事です。手元に心電図を置いておく(付けておく)方法としてはいろいろな手段がありますが、クリニックで行われる方法でもっとも一般的なものはホルター心電図と言って24時間心電図を記録するタイプのものがあります。これは通常クリニックで心電図を装着して、そのまま自宅に帰り、翌日心電図を外しに来院する形になります。この場合であれば、1日のうちに発作を何度も繰り返す方であれば、必ずこれでとらえることが出来ます。

 

家庭用携帯型心電計


1日のうちに発作を繰り返す方であればよいのですが、人によっては1週間に1回しか症状が出ないとか、もっと少ない方の場合は数か月ぶりに症状が出たという方も見えます。そんな方の場合はホルター(24時間)心電図では結局不整脈をとらえることはできません。その様な場合は、最近また多くなってきたなというタイミングを見計らってしつこくホルター心電図を繰り返すことになります。しかし、それではタイミングが合わないといつまでたっても正常の心電図がとらえられるだけになります。


別の手段としては、家庭用携帯型心電計を用いたりします。(家庭用携帯型心電計はオムロン社などから一般向けに販売されており、家電量販店などで購入が可能ですが、安い機械ではないため誰もが気軽にと言う訳にはいかないと思います。)病院によっては貸出しを行っている施設もあります(申し訳ありませんが、当院では扱っておりません。)ドキドキを感じた時にパッと胸に当てるだけで心電図を記録してくれますから、比較的そのタイミングを逃すことは少ないと思います。



動悸の症状ってドキドキだけ?

 脈が突然速くなったり、ばらばらになったりする不整脈ですが、感じ方は千差万別です。同じ不整脈であっても全くなんとも感じない方もいれば、いてもたってもいられないというようなとてつもない違和感を感じる方もいます。
以下に発作性心房細動を生じたときに皆さんどんなふうに表現されるか挙げてみました。


脈拍触知

胸がドキドキする。(最も一般的な症状です。)
胸がどくどくする。
心臓が躍るような感じがする。
胸がもやもやして嫌な感じがする。
どくんと突き上げられる様な感じがある。
気分が悪い。
胸がモヤモヤする
胸のあたりに違和感を感じる。
何とも言えない胸の変な感じがする。
心臓が裏返るような感じ。
胸がそわそわする。
心臓があるのがわかる。
もぞもぞする。
何となく落ち着かない感じ。
胸がつかえる。
胸が苦しい。
時々心臓の鼓動が早くなる。
寝てしまったら、このまま死んでしまうのではないかと不安になる。


いかがでしょうか。
同じような不整脈でも人によっては全然感じ方も違うようです。
何となく変な感じがするという方は、ぜひ一度心電図を行うことをお勧めいたします。

 


イベントレコーダー


ホルター(24時間)心電図でも、不整脈をとらえることが出来なかった方の場合は、次の手段として、イベントレコーダーと言うものがあります。
これはホルター心電図の様に自宅につけて帰る心電図の一つですが、記録時間が大幅に違います。2-3週間ぐらいをめどに不整脈の監視を行います。ホルター心電図との違いは、ホルター心電図の様にずっと心電図を記録し続けるのではなく、不整脈の発生した瞬間だけ、もしくは患者様がトリガーボタンを押した時だけ心電図が記録されることです。そのため長時間の観察が可能となります。(長期間にわたるため、入浴などの際は、患者様自身で心電図の付け外しを行うことになります。)たまにしか出ない不整脈はこれで発見率が高まります。


植込み型心電計


 またそれでも不整脈が見つからない場合にはもう一つ手段があります。
 これは保険適応が少し限られますが、原因不明の失神で不整脈が原因として強く疑われる場合や、脳梗塞を発症された方で、CT、MRIなどで十分な精査を行ったにもかかわらず原因が特定できない場合に使用されます。
 失神を生じるほどの不整脈(著しい徐脈や著しい頻脈)の場合は、命にもかかわる状態ですから、見つかり次第すぐにペースメーカーを入れたりして対応しないといけないので、何が何でも不整脈を見つける必要があります。
 また、脳梗塞の中には心房細動の様に不整脈が原因で、心臓の中に血栓という血の塊が出来て、それが脳に飛んできて発症するものがあります。脳梗塞の原因が心臓の血栓由来かどうかで血をさらさらにする治療薬の種類がまったく変わりますのでしっかりと診断する必要があります。

 

日本メドトロニック社プレスリリースより引用

リビールリンク:植込み型心電計

植込み型心電計と言うものがあります。最新型のものはマッチ棒をもう少し太くしたぐらいの大きさですが、これを胸の皮下に埋め込みます。ちょっとした小手術になりますが、傷口は1㎝程度と小さく、皮下に埋め込まれていても小さいのであまり目立ちません。傷口が閉じれば入浴も普通にできるので日常生活に支障になることはありません。この機械を用いれば電池の寿命が切れるまでの約3年間心電図をモニターし続けることが出来ます。

(植込み型心電計は医院での挿入ができないため、総合病院などへの紹介をさせて頂きます。)

 

なかなか植込み型の心電図まではよほどのことが無い限り使用しませんが、本当に精査が必要な方はここまで可能というお話しでした。


 


症状のある時の心電図


逆の発想で、まさにドキドキを自覚しているそのときに心電図をとれば、異常であるか異常でないかはその場ですぐに判断がつきます。
本物の不整脈が原因でドキドキを自覚しているのであれば、そのタイミングで検査をすれば、必ず心電図に異常が見られるはずです。
だから逆にその時心電図に異常がなければ、そのドキドキは不整脈が原因ではないと言い切れます。


ではなぜ不整脈が無いのにドキドキを自覚しているのでしょうか。

日常生活でよく経験することですが、大勢の人前で話すため緊張していたり、すごく怒って気が高ぶっていたり、スポーツ観戦をして興奮していたり、何か不安を感じているときなどは、心臓が高鳴り、ドキドキが止まらないものです。
また、風邪をひいて高熱をだしていたり、頭が痛かったり、けがをして傷口がずきずきと痛むとき、こんな時はある種の興奮状態にあり脈が速まり動悸を感じるものです。
こんな時は不整脈が起こっているのではなく、単純に興奮で脈が速くなっているだけにすぎません。しかし、自分ではその興奮の原因に気が付いておらず、動悸だけを自覚していることがあり、そのためドキドキして苦しいと病院を受診されることになります。
この場合心臓そのものには異常はありませんから、心臓の病気(不整脈)を心配する必要はありません。
ただし、興奮の原因にけがや病気(例えば感染や甲状腺ホルモンの異常や重篤な貧血など)が隠れている可能性がありますから、そちらをきちんと調べて治療する必要はあります。